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オーストラリアバレエ「白鳥の湖」(グレアム・マーフィー版)

7/14(土)13:00 東京文化会館 大ホール

オデット:マドレーヌ・イーストー
ジークフリート王子:ロバート・カラン
ロットバルト男爵夫人:ルシンダ・ダン
女王:シェーン・キャロル
女王の夫:ロバート・オルプ
第一王女:ゲイリーン・カンマーフィールド
第一王女の夫:藤野暢央
公爵:アダム・スーロウ
公爵の若い婚約者:カミラ・ヴァーゴティス
伯爵:マーク・キャシディ
伯爵の侍従:マシュー・ドネリー
提督:コリン・ピアズレー
侯爵:マーク・ケイ
男爵夫人の夫:フランク・レオ
宮廷医:ベン・デイヴィス

招待客、ハンガリー人、召使、乳母、
従者、小さな白鳥、大きな白鳥、白鳥:オーストラリア・バレエ団

指揮:ニコレット・フレイヨン
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


お見事!

‥‥という感想です(笑)。

才能のあるクリエイターの創意と工夫に、ダンサーの熱意が加わって、見応えのあるエンターテイントメントに仕上がっていたという印象。もう一度観に行くかと聞かれれば「いや、1回観れば充分」と答えるし、いわゆるプティパ版正統派クラシックバージョンの白鳥を踊らせたらこのバレエ団はガタガタだろーなーというのも見え隠れはするのですが(笑)、でも、良い作品の良いパフォーマンスでした。まあ、こういう「大人の楽しみ」的な余裕のある舞台を欧米では総合芸術というのでしょうね。満足しました。

「白鳥の湖」という「美で見せる完全なお伽噺」を、現代の人間ならたいていは知っている「ダイアナとチャールズの物語」と言うゴシップネタに置き換えたのがある意味正解。最初のアイディアである「役をめぐる二人のバレリーナ」や「ロマノフ王朝の崩壊」だったらこんなに面白い作品にはたぶんならなかったでしょうね。
どんな俗っぽい仕上がりになっているんだろう‥‥と言う、普段バレエを観るときと違う興味で見始めたから、案外普遍的なテーマを伴ったきちんとした物語バレエだったことに妙に感心してしまいました。グレアム・マーフィーってかなりな才人だわ~。特に音楽に対する感覚がすごく鋭い。このバレエのために編集されたのか?と思うぐらい振りとストーリーと音楽の関係性がきっちり出来ているし(使われているのは1877年のモスクワでの世界初演時で使われた曲順に基づく「白鳥の湖」編成版)センスもいい。振り自体も言語が確立されていて面白いし、ソロもパ・ド・ドゥもコール・ドを使った舞台全体の構成演出の仕方も思わず「上手い!」と唸ってしまう巧みさに満ちている。ところどころプティパやイワノフ、バランシン(チャイパドの音楽を使っているところ)振付の本家取りみたいなものが入っているのも洒落ていて面白いなーと思いました。
マーフィーについては、志も高く技術も巧み、望まれたものをいつでもきちんと観客に提供できる「手練れのコレオグラファー」という印象を受けました。機会があればこの人の他の作品も観てみたいです。

作品の内容としては、「白鳥の湖」というより、現代版「ジゼル」という感想を持ちました。
マシュー・ボーンのスワンレイクとの類似点がかなり指摘されているようですが(まあ、同じ英国王室モチーフだしね)、私はどちらかというとマッツ・エック版ジゼルを連想したなー。
なんつーかね、現代的なんだよね、舞台に表出しているものの本質が、もう、どうしようもなく現代的。
自分の価値を他人の物差しでしか測れない悲劇。
自分を惨めにさせるものを見返すという妄執でしか満足できない悲劇。
オデットも王子もロットバルト男爵夫人も、ものすごく自分が大切で愚直なほどその思いに正直な人間であるゆえに、自分自身の幸せしか見えず不幸になっていく。大切なのは「自分がいかに傷つけられたか」、そして、不幸なのは「なぜ自分が愛されないのか」。

もちろん、私だって現代女性(笑)。そういう部分がないわけではないのでなんだか登場人物たち(特に1幕のオデット)の思いにすこしシンクロしてしまう箇所がいくつかあったのよ。ほとんど今まで関心を抱いたことがなかったので、自分ってこんなにダイアナ妃のこと好きだったのかーと、少しびっくりしたりして(笑)。

ただ、オデットの心象風景が白鳥の群舞とともに綴られる2幕,ロットバルト男爵夫人の舞踏会という設定の3幕は‥‥うーん、やはりどうしても物語ではなくて、“バレエ”として観るしかない部分があるので、ちょっと、群舞のダンサーたちの技術力とか主演ダンサーたちの“バレエ力”の弱さが見えてきてだれてきちゃった気はするかなー‥‥。
その辺はまさにマーフィーご本人のコメントにあるように『(白鳥の湖というバレエは)バレリーナにとっては贈り物です。正確無比な技術で踊りこなすことが出来れば。こんなことは言いたくありませんが、そういうものだからです。いかに美しく踊られるか以外に観るべきものはないと思います。もし美しく踊られなかったとしたら、気休め程度のものしか心に残らず「まあね、あれだったら20分か40分の小綺麗な小品に縮められるんじゃないかな」と言うことになる』作品なのでしょう、「白鳥の湖」というバレエ自体は。

主演ダンサーたちは魅力的でした。
オデット役のマドレーヌ・イーストーはまさに体当たりの演技。この役のすべてに自分を投げ入れて、持てるすべての情熱を持って演じているところにすごく好感を持ちました。彼女はアレグロが得意なのかな、アップテンポになると途端に水を得た魚のように輝きを増すところが現代女性らしい強さを感じさせて魅力的でした。

ジークフリート王子のロバート・カランもこの難しい王子(バレエ史上最強の優柔不断非道男ではないか?笑)をきちんと丁寧に演じていてすごく好感を持ちました。感情移入をしにくい役なのではないかと想像するのだけど、ある意味とても複雑に誠実な人物像でもあるよね、少なくともアルブレヒトとかソロルみたいに嘘つきではない(笑)。バレエ技術的にも申し分ない出来でした。

ロットバルト男爵夫人のルシンダ・ダンは助演女優賞ですね。存在感、演技力、最後のソロの見せ方、素晴らしかったです。役自体は王子とオデットに比べてちょいステレオタイプな敵役になってしまっているのでなかなか見せ所がない気がするのですが、目線とかちょっとした仕草にこの女性の奥にある深い感情の沼のようなものが見えてくるのが味わい深かったです。

あとは‥‥うーん、群舞はまあ、オーストラリアバレエだからこんな感じかな?という感じ。(11年ぶりに観たのだからあんまりえらそうなことは言えないけど^ ^;)
オケは‥‥金管がかなりふかしてはおりましたが、総じてメリハリ良く、舞台ときっちり響きあっていて良かったと思います。指揮者が陽性のエネルギーを感じさせるボーイッシュな女性の方で、そういうところも「オージーバレエ」って感じで何だか良かったです。

ああ、そう!最後になってしまったが、舞台美術、そして衣裳が‥‥とても、とても、素敵でした~(うっとり)
私のバレエへの関心の50%以上はこの「美術」に対してなので(例外も多いが^ ^;)、こういう本物の舞台美術を観られると、もうそれだけですごく嬉しくなってしまうのでした。
特に1幕の、アイボリーをベースに薄いグレーと品の良い金やピーチのペールトーンを組み合わせた舞台構成の奥に鮮やかに輝く青い湖を配したそのセンスの良さ! 2,3幕に現れるM.C.エッシャーの「波形表面」の生み出す心理的不安感、1900年当時のジュネーブという設定に基づいた趣味の良い優雅な衣裳の数々‥‥(ハンガリアンダンサーズの衣裳のシックな美しさ!)うーん、堪能しました。
残念ながらこの舞台の美術・衣裳を担当されたクリスティアン・フレドリクソン氏は、2005年にお亡くなりになってしまったそうですね。合掌。
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「白鳥の湖」幻影解釈の流行

オーストラリア・バレエ団とグルジア国立バレエの「白鳥の湖」の幻影解釈には、パリのヌレエフ版ほどのインパクトは感じませんでした。

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